整形外科にはいろいろな患者さんが受診されますが、肩、腰、膝などの運動器の痛みを訴える患者さんが圧倒的に多いのが現状です。
変形性膝関節症で軟骨がすり減った患者さんに、立位で撮影した膝のレントゲンを見せて、「こんなに膝の軟骨がすり減って関節の隙間が狭くなっているので膝が痛むのです。」と説明すると納得してくれますが、実はこれは嘘なのです。
なぜなら軟骨には神経がないので軟骨が痛むということはあり得ないからです。
軟骨がすり減った状態では、膝がぐらぐらするために立ったり歩いたりしたときに関節の構成体に無理な刺激が加わり軟骨以外に存在する痛点が刺激されて痛むのであって、軟骨が痛いわけではないのです。
さらに、痛みを感じるのは脳であって、膝では神経の末端の痛点が刺激されているに過ぎません。
面白いことに、脳は痛みを感じるところなのに脳自体を切り刻んでも全く痛みは感じません。脳自身には痛点がないからです。
この様に、体のあちこちにある侵害受容器(痛点)が刺激されて脳で痛みを感じるタイプの痛みを「侵害受容性疼痛」といいます。
しかし、痛みはこれだけではなく神経そのものが傷ついて痛みを生じることがあり、こうした痛みは「神経障害性疼痛」と呼びます。
帯状疱疹で神経が傷ついて激しい痛みが残ったりするのは神経障害性疼痛の代表例です。
やっかいなのは長年に渡り侵害受容器が刺激されて神経に異常をきたすと侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在して「混合性疼痛」となり慢性化してしまうということです。
このような痛みには通常の痛み止めは効かなくなります。
変形性膝関節症などで侵害受容性疼痛が起こってきたときには、早く原因をみつけて適切な治療を行い、神経障害性疼痛が混在して慢性化するのを防がなくてはなりません。
最近はこうした頑固な痛みにも効果のある新薬が登場してきましたので、早めに病院を受診することをおすすめいたします。
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