第9回 多機能のケアミックス型病院
家族と一緒に宿泊できる和室
小田急線ドアステッカー「夢があるから、がんばれる」
こういったリハビリ体制を構築してきた同院ですが、鈴木院長は、これからの時代、「回復期リハビリ」だけではない、より包括的なケアが求められていると語ります。「退院してからの在宅生活や、介護を担っているご家族のためにも役立てるといった、様々なシーンを見据えなければなりません。私は、『Cureだけでなく、Cureを包含したCareを提供する医療』を目指そうと申しております」
2011年から同院が取り入れた緩和ケア病棟の開設もそういった施策のひとつです。25床あり、家族休憩室やキッチンも完備。抗がん治療(抗がん剤、放射線治療、手術など)や、身体の負担になるような処置・検査、単なる延命のための措置や蘇生術などは基本的に行わず、残された時間を家族と共にゆっくり過ごせるよう細心の支援をします。
また最近では、在宅へ戻った患者さんへの「訪問栄養指導」「訪問リハビリ」も行い始めました。訪問栄養指導は、嚥下障害の専門家や管理栄養士が定期的に患者さんを訪問し、その患者さんに合った食べ物や食べ方を指導。退院後も充実した食生活を営めるように支援します。訪問リハビリは、機能が落ちがちな退院後も患者さんを見守り、その人の生活習慣に合ったリハビリのやり方を自宅や周辺環境の実際を検討しながら提案していくというものです。時には、自宅の段差などの改修のアドバイスもすることで「退院していただくまででなく、その後も引き続き、健康な生活を送れるよう寄り添っていく」(鈴木院長)取り組みなのです。 そういった患者さんのために、一ケ月程度の短期集中リハビリを行う在宅応援入院も行っています。
また、同院の最も特徴的な施策に、神経難病リハビリセンターでのレスパイト入院(介護休暇目的入院)が挙げられます。重介護になりがちな神経難病患者を数週間入院させることで、家族はその数週間、旅行や冠婚葬祭に行くなどし、心身をリフレッシュさせることができます。それだけではなく、患者さんも入院中、QOLの向上を目指して専門的なリハビリを行い、介護保険内サービスとは違う効果が期待できるのです。
2010年から行われている神奈川県の「神経難病患者等受入れ病床確保事業」の一環として、同院は協力病院の指定を受け、県の内外から注目を集めています。
鈴木院長はこれからを見据え、こういった多角的な施策をさらに推し進めるべきと考えています。
「高齢化社会を迎え、これからはがんや認知症患者も増えていきます。そのためのレスパイトも必要になるでしょう。当院ではこのようにリハビリだけでなく、その前後周辺のケアもできる病院へ役割を広げていきたいのです。そのことで地域に貢献できたら、こんなに嬉しいことはありません」
(取材・文:山辺健史)
鈴木 龍太 氏
医療法人社団三喜会
鶴巻温泉病院 院長
<経歴>
1977年、東京医科歯科大学医学部卒業。医療法人社団三喜会
鶴巻温泉病院
〒257-0001
神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1
tel:0463-78-1311
http://www.sankikai.or.jp/tsurumaki/
<特徴>
回復期リハビリテーションの患者さんの入院が中心。回復期リハビリ病棟の他、介護療養、医療療養病棟と神経難病リハビリセンター、緩和ケア病棟も併設。回復期リハビリを含めた、多機能のケアミックス型病院として運営しています。