第9回 多機能のケアミックス型病院
6階サンルームでのリハビリの様子
同院のリハビリは、実際の生活に即した内容を提供します。その為、病棟やベッドサイド、屋外や歩道など、トレーニングルーム以外の生活に必要な環境を自由に利用し、目的に合わせ、リハビリを行っています。
中でも病棟での訓練は重要視されています。なぜなら、訓練中に医師や看護師も積極的に成果を見ることができ、それについて声がけすることで患者さん自体のやる気も上がっていくことがあるからです。
入院中の長いリハビリ生活を続けてもらうための工夫は療法士の接し方にもあります。「療法士は、患者さんに『今、行っているリハビリの意味』と『退院後の生活のイメージ』をもってもらうように接しています」と前述の木村リハビリ部副部長。『今、行っているリハビリの意味』では、現在しているこの訓練が日常生活の中ではどういう意味をもつのか具体的にイメージしてもらうことで、「この訓練を終えると、瓶の蓋が開閉が可能、風呂桶を跨ぐことが可能」など具体的に説明し、患者さんの理解とやる気を刺激することを心がけているといいます。
しかしそれでも長い訓練生活に疲れる患者さんは少なくありません。その時は「『退院という大きな目的』をもう一度思い出していただくのが大事」と説明します。その場合、家族の力も借りながら患者さんに接することにしているそうです。
中庭には足湯の施設もあります
「患者さんは誰もが家族の中で、父や母、祖父母といった役割を担っています。発症したからといって、その役割が消えるわけではないので、家族の声を橋渡しにすることで、『病気の前に使っていたおじいちゃんのお茶碗でもう一度ご飯食べようよ』『お母さんとまた散歩したい』というこれからの生活のイメージを思い起こしていただき、それに向けて頑張っていただくのが必要と考えています」
同院では、様々なレベルで患者さんに接する「想い」があります。
今西副院長はリハビリ部全体における目標をこう説明して結びました。「訓練の目的は、患者さんのQOL(Quality of life/生活の質)を上げることですが、最大の到達点は退院後の社会生活に楽しみを見つけてもらうことです。確かに、リハビリは元の生活に戻れるようになることが大事です。しかし、その上で、『退院後にどのような生活がしたいか』『その人らしく楽しく生きるヒント』をリハビリ病院として与えられる存在になれることが目標なのです」
(取材・文:山辺健史)
鈴木 龍太 氏
医療法人社団三喜会
鶴巻温泉病院 院長
<経歴>
1977年、東京医科歯科大学医学部卒業。医療法人社団三喜会
鶴巻温泉病院
〒257-0001
神奈川県秦野市鶴巻北1-16-1
tel:0463-78-1311
http://www.sankikai.or.jp/tsurumaki/
<特徴>
回復期リハビリテーションの患者さんの入院が中心。回復期リハビリ病棟の他、介護療養、医療療養病棟と神経難病リハビリセンター、緩和ケア病棟も併設。回復期リハビリを含めた、多機能のケアミックス型病院として運営しています。