知っておきたい!対処方法~大腿骨近位部骨折編~

大腿骨近位部骨折のリハビリテーション

大腿骨近位部骨折は、一刻を争う病気ではありません。
しかし、治療が遅れると生命に関わるため、早急な治療が必要です。

大腿骨近位部骨折編

(3)入院中のリハビリテーション(その②)

リハビリテーションチーム医療

術後は、まずベッドから離れる訓練をはじめて、1日~2週間くらいたつと、手術した足に体重をかけての立ち上がり訓練が始まります。
立ち上がりがスムーズにできるようになったら、次は平行棒内歩行訓練となります。久しぶりに脚を動かすことになりますし、体重移動もしなくてはいけませんから、新しい痛み(いわゆる筋肉痛)が現れます。
訓練の進行に合わせて、痛みが出やすい時期は決まっていますから、そういう訓練に移る時は、理学療法士が患部状態や動作状態を評価をして、適切な運動量への変更や適した運動方法への改善など、その状況に合った調整をします。

また訓練に平行して、最初に骨折をしてから股関節や膝や足首の運動が出来ない方がほとんどなので、これらの関節には固さ(拘縮)が生じています。そこで関節の動きを良くする運動「関節可動域訓練」を行います。

歩行に慣れてくれば、最終的に歩行器~杖歩行訓練に移ります。補助がなく押し車、杖をつきながらでも歩行が可能になったら自宅退院になります。しかし、忘れてはいけないのは、あくまでも病院という環境の中で歩けるようになったという点です。この時点で、骨折をしてから1カ月程たっていますので、運動量は退院前に比べると少ないため、退院した時点では筋力・持久力はかなり不足しているので注意が必要です。

従って、家族やケースワーカーの方は、受傷した時点から在宅復帰のための準備(介護保険の変更、環境改修、自助具の申請)に気を配っていただかなくてはいけません。また退院後であっても、股関節周囲筋の柔軟性の改善と筋力・持久力の増強を目的としたリハビリテーションを継続して行う必要があります。

リハビリテーションが整った病院でしたら、通院でリハビリテーションを受けることも可能です。また在宅でのリハビリテーションも可能な場合もありますから、退院時に確認しておくことをお勧めします。

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大腿骨近位部骨折編 ― 大腿骨近位部骨折のリハビリテーション ―

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執筆者の紹介

福井智一氏

福井智一氏

医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科

昭和51年大阪生まれ
兵庫医科大学卒業

兵庫医科大学大学院を卒業後、兵庫医科大学整形外科学教室や北海道我汝会えにわ病院などを経て2012年4月から現職。
専門は股関節を中心とした関節外科