知っておきたい!対処方法
~乳がんのリハビリテーション~

乳がんの正体と検査

リハビリテーションは日常生活を取り戻すのに必要不可欠

乳がんのリハビリテーション編

(4)乳がんになる遺伝子要因がある!?

がんは「何らかの原因によって遺伝子が傷つき、それによって異常に増加する『何にもならない細胞』が増える病気である」と他章で紹介しました。私たちの体内では、常に新しい細胞が誕生しているため、それらの中にはがんの元になる、いわゆる「がん細胞」も、実はしばしば発生しています。しかし、通常の状態であれば、そうした細胞は、生物が持っている免疫力などによって、発生するとすぐに退治されるため、そう簡単にがん細胞が、そのままがんになることはありません。

それでも、どうしてがんになるのかというと、1つには遺伝子的な要因が挙げられます。特に乳がんは、遺伝子的な要素が強いがんだといわれています。そのため、例えばお母さんや姉妹の中で乳がんになった人がいて、それが複数であったりするとなりやすい性質を受け継いでいる可能性があります。

これを「遺伝子性乳がん」といい、こうした傾向は「卵巣がん」でも見られます。ちなみに、BRCA1またはBRAC2という遺伝子に変異があると乳がん・卵巣がんになる可能性が高くなることが分かっています。

最近、こうした遺伝子性による乳がん・卵巣がんの予防はアメリカなどで注目を浴びていて、あるアメリカの論文では、全ての乳がんの1割ほどが、こうした遺伝子が原因の乳がん・卵巣がんであるという統計も発表されています。実際、アメリカの有名な女優であるアンジェリーナ・ジョリーが、まだ発症していない段階で、2013年に乳がん予防のために両乳房の切除手術、さらに2015年には卵巣がんの予防のために卵巣と卵管の摘出手術を受けたのは、母親が乳がんだったからだといいます。

乳がん検査の図
乳がんは、特に40歳を超えると発生リスクが高くなる傾向がありますが、遺伝子性のがんは年齢に関係なく発症するといわれていますので、もし身内に複数の乳がん・卵巣がんの患者がいれば18歳から、毎月1回は触診など自己検診を、25歳から半年に1回は医師の診断を受けるようにした方がいいでしょう。



乳がんのリハビリテーション編
― 乳がんの正体と検査―

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監修

仁尾 義則 氏

仁尾 義則 氏

<乳腺外科医>
医療法人喜水会 乳腺外科 仁尾クリニック 院長

昭和27年生まれ

1976年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部第二外科入局。その後、赤穂市民病院外科、京都大学大学院を経て、UCLA留学。帰国後、京都大学第一外科助手、島根大学医学部第一外科助教授、児玉外科、十条リハビリテーション病院を経て、2008年4月より現職。2014年12月までに、約4400例の手術を行なう(乳腺疾患約2520例、甲状腺疾患約180例、消化器疾患約1350例、その他約370例)。