見た目では分かりませんが、人間をはじめ動物の体内では、常に新しい細胞が生まれ、古くなった細胞と入れ替わっています。一般的に、新しく生まれる細胞は、その発生する場所に従って、例えば、皮膚なら皮膚、骨なら骨の細胞にしかならないようにコントロールされています。
こうした正しい細胞の発生を司っているのが「遺伝子」です。ところが、何らかの原因によって、遺伝子に傷が付いたりして、正しい細胞が生み出されなくなることがあります。そうして“間違って”生み出された細胞の中で、勝手にどんどん増殖していく異常な細胞が現れることがあります。それが、いわゆる「がん細胞」と言われるもので、正常な細胞をどんどん浸食していき、やがて大きな塊となります。
これが、通常「がん」と呼ばれるものであり、がんは急速に増殖する際に、正常な細胞の栄養を吸収したり、正常な細胞が果たすべき役割を阻害したりするため、命にかかわる症状を起こします。
そのがん細胞が乳房に発生したものが「乳がん」です。ただし乳房には、母乳を分泌する「乳腺」と、それを支える「脂肪」などの組織がありますが、実は乳がんは、乳腺からしか発生しません。
ちなみに、一般的に大人の女性の乳房は、乳頭を中心に乳腺が放射状に15~20個並んでいて、それら乳腺は小葉に分かれています。そして、その小葉は乳管という管で繋がっていて、乳がんの約9割はここから発生します(これを「乳管がん」といいます)。
仁尾 義則 氏
<乳腺外科医>
医療法人喜水会 乳腺外科 仁尾クリニック 院長