一口に「乳がん」と言いますが、実際には、がんが発生する原因になった要素などによって、患者それぞれの乳がんは異なっています。それでも大きく、乳管や小葉などの細胞に発生したものが乳腺の組織内に留まっている「非浸潤(ひしんじゅん)がん」と、がん細胞が乳腺を包んでいる膜から外に出て、その周囲の組織などに浸出している「浸潤がん」に分けられます。
全体の1~2割を占めている非浸潤がんは、いわゆる『早期の乳がん』で、乳頭からの分泌液があったり、マンモグラフィーや超音波検査で発見したりすることが可能です。また、完全に除去すれば完治も期待できます。
一方、浸潤がんの場合は、乳房に広がったがん細胞が乳房内のリンパ管などに入り込んで転移している可能性もあるため、単純に除去するだけでは済みません。しかし、新しい治療法が考案されていることもあり、一昔のように、がん細胞近くのリンパ節を全て除去するといったような手術をする必要は無くなっています。
なお、検査ですが、一般的に乳がんは『しこり』があって発見されることが多いということが知られていますが、例えば、がんが進行しても、しこりができない「炎症性乳がん」などがあります。そのため、本当に乳がんであるかどうかを判断するためには、超音波エコーやMRIなどを使って、さらに詳しい検査を行う必要があります。
仁尾 義則 氏
<乳腺外科医>
医療法人喜水会 乳腺外科 仁尾クリニック 院長