知っておきたい!対処方法
~乳がんのリハビリテーション~

乳がんの正体と検査

リハビリテーションは日常生活を取り戻すのに必要不可欠

乳がんのリハビリテーション編

(3)乳がんの分類とステージ

前章で、実際の乳がんにはいろいろなものがあると紹介しました。そのため、有効な薬を選ぶためや治療後(予後)の予測をしたりするために分類が行われます。

基本的には、増殖を促す物質が見られるか、あるいは増殖能力がどれくらいあるかなど、そのがん細胞の持つ性質によって分けられています。

そうした乳がんを調べる代表的なものとしては「女性ホルモン受容体」と「HER2(ハーツー)タンパク」があります。

女性ホルモン受容体とは、女性ホルモンと結合するタンパク質のことで、がん細胞の核に現れることが多く、数が増えると陽性となります。乳がんに関していえば、「エストロゲン受容体(ER)」と「プロゲステロン受容体(PgR)」が女性ホルモンに反応することが知られていますが、現在は、ERだけで陽性か陰性かが判断されるようになっています。

一方、HER2は、がん細胞の表面に発生するタンパク質の一種です。これが多いと、がん細胞の増殖が促されるといわれています。さらに、再発リスクも高くなるとも考えられていますが、現在は、がん専用の薬である分子標的治療薬(「トラスツズマブ」など)が開発されていることもあって、再発防止などに効果が現れています。

また最近では、がん細胞の遺伝子を解析(遺伝子検査)することで、エストロゲン受容体・プロゲステロン受容体・HER2が腫瘍細胞に発現していない乳がん、いわゆる「トリプルネガティブ」なども、より細分化されるようになってきています。

なお、こうした乳がんは、がん細胞が乳腺内にとどまっていて、しこりが見られない「0期」から、離れた臓器に転移している「Ⅳ期」まで、その進行の度合いによった5つのステージに分けられています(Ⅱ期は、しこりの大きさやリンパ節の転移の有無によってⅡA期とⅡB期に分けられ、さらにⅢ期は、しこりの固定位置やリンパ節の転移の有無などによってⅢA期、ⅢB期、ⅢC期に分類されます)。



乳がんの病期の図


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― 乳がんの正体と検査―

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監修

仁尾 義則 氏

仁尾 義則 氏

<乳腺外科医>
医療法人喜水会 乳腺外科 仁尾クリニック 院長

昭和27年生まれ

1976年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部第二外科入局。その後、赤穂市民病院外科、京都大学大学院を経て、UCLA留学。帰国後、京都大学第一外科助手、島根大学医学部第一外科助教授、児玉外科、十条リハビリテーション病院を経て、2008年4月より現職。2014年12月までに、約4400例の手術を行なう(乳腺疾患約2520例、甲状腺疾患約180例、消化器疾患約1350例、その他約370例)。