回復期を経て、早期の社会復帰を目指して、回復した機能を再び低下させないために、退院後も通院や自宅などで引きつづき行われるのが「生活期(維持期)のリハビリテーション」です。人間の身体は長期間、その機能を使わないでいると、筋肉がやせたり、関節が固まって動かしにくくなったりする、いわゆる「廃用症候群」を避けることも目的になります。
生活期(維持期)のリハビリテーションでは、これまでの訓練で取り戻した機能を維持しながら、日常生活を過ごせるようにします。ですから、この時期のリハビリテーションは、極端に言えば、『できる限り自分がやれることは、生活の中で行う』ことがリハビリテーションになります。
具体的には、朝起きて顔を洗い、着替えをして、食事をして、トイレに行く。その他、歯を磨いたり、階段を上り下りしたり、お風呂に入ったりするなど、脳梗塞を発症する前には、当たり前だった日常の動作を自身でできれば、毎日行います。
ただし、障害が残っている状態が続いているのならば、無理をして転倒し、骨折などしたら、逆に寝たきりの状態になりかねません。ですから、どうしてもできないことは、自分だけでしようとせずに、迷わず家族などの手助けを求めましょう。また、周囲の人も、障害があっても暮らせるように、階段やトイレ、風呂場に手すりをつけたり、床に滑り止めをつけたりするなど、家の中を、いわゆる「バリアフリー」な状態にしてあげることも大切です。
こうした日常生活を送ることに加えて、回復期のリハビリテーションと同様に、失った機能を回復するために、ボツリヌス療法や磁気刺激療法、随意運動介助型電気刺激装置「IVES(アイビス)」を使ったリハビリテーションなども、回復期・維持期のリハビリテーションでは重要になります。
正門 由久 氏
<リハビリテーション科専門医>
東海大学医学部 専門診療学系 リハビリテーション科学 教授