退院した本人はもちろんですが、迎え入れる家族も重要な役割を果たすことになります。障害を抱えながら、本人は今後の生活を送ることになるわけです。
まず、このことを家族のみなさんにも共有していただきたいと思います。ただ、「療養している病人」ではなく、障害はあっても「生活している人」なのだということも同時に認識していただきたいのです。
もちろん、「運動機能をどのように考えるか」で述べたように、生活動作一つひとつに、発症前より時間を要することになるでしょう。そこで重要なのが、「見守る」という姿勢です。時間がかかるのがもどかしいからと言って、いちいち家族や周囲の人たちが介助していたのでは、本人の自立度はいつまでも低いままでとどまってしまいます。
もちろん、病院のリハビリテーションのようにパフォーマンスに要するさまざまなコスト(時間、家族の労力など)を度外視してまで「見守る」わけにはいかないでしょう。家族に過度な負担が生じることは避けなければいけませんが、どの程度までなら許容できるか、専門家の意見を踏まえつつ、本人の生活を見守っていただきたいと思います。
宮崎陽夫氏
理学療法士
医療法人社団誠馨会総泉病院リハビリテーション部部長