回復期リハビリテーションの目的が主疾患(今回の場合は脳卒中)の治癒を進めるなかで在宅復帰へのソフトランディングを主目的としているのに対し、維持期リハビリテーションは身体機能の維持・改善に加え、社会的孤立を防ぐことも視野に入れています。
ただ、高齢になるほど、主疾患そのものの完治が難しくなります。リハビリテーションの目的も「完治させる」というよりも、「障害を持ったままどのように生活していくかという戦略を練るための準備」と捉えるべきです。「リハビリをみっちり行えばいずれは完治する」と考えすぎると、かえって「訓練のための訓練」になってしまいがちです。
片麻痺などは「運動障害」というより「適応障害」と考えることもできるでしょう。環境に応じて何ができるか、どこまでできるかを考える。突き詰めれば、運動・行動を自身の判断で止めるという「制御能力」も含まれるでしょう。「歩ける」という評価一つをとっても、「どこでも歩ける」ということは望めないかもしれませんが、「どこまでなら歩ける」という判断を自分で下せることも重視されるのです。そうした自分の運動能力と生活との兼ね合いを、リハビリテーションで学習していただきたいと思います。
宮崎陽夫氏
理学療法士
医療法人社団誠馨会総泉病院リハビリテーション部部長