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第6回 高齢化進む地域の医療・介護ニーズに応える

リハビリテーションの現場から
~医療法人社団誠馨会 総泉病院(千葉県千葉市)~

医療法人社団誠馨会 総泉病院
院長 大坊昌史 氏
複数の疾患を抱える高齢者に対応

和めるゆとりある癒しの環境
利用者のみ開放された中庭は
憩いのスペース

医療法人社団誠馨会総泉病院は1987年に開院した353床の療養型病院です。急性期病院で治療を受け、急性期を脱した患者が入院し、ここでリハビリテーションなどを行って自宅や介護施設に戻るための備えを進めます。最近の在院日数は2~3カ月というケースが増えてきています。

医療保険で入院する医療療養型病棟が253床、介護保険適用の介護療養型病棟が100床という内訳になっており、患者の状態によって適用を使い分けています。入院患者の60%が急性期病院からの転院で、そのほか介護施設、同院の外来がそれぞれ15%という割合になっています。病床は常に94~95%が埋まっています。

同院の位置する千葉市は、周辺に千葉大学附属病院や千葉中央メディカルセンターなど、高機能、急性期の医療施設はある程度整備されています。ところが、急性期を脱した後の患者を受け入れる医療施設は不足気味です。

なかでも回復期リハビリテーション病棟の不足は深刻で、千葉県も回復期リハビリテーション病棟の必要性を強く認識しており、政策的にも後押しを進めているほどです。同院でも回復期リハビリテーション病棟機能を備えるためのスタッフを集める取り組みを進めていますが、リハビリ専門医をはじめ看護師、療法士など“人出不足”の状態が続いています。

こうした「受け皿」づくりの重要性が注目されるようになった主な理由として、医療・介護政策の変化を挙げることができます。急性期病院はDPCを採用し、平均在院日数を10日前後まで短縮してきていますが、すぐに在宅、ないし施設へといっても高齢者ではなかなか行く場がないのが実情です。

さらに、患者像の変化を挙げることができます。以前に比べて高齢者の割合が非常に高くなったというのです。周辺地域を見ても、病院から車で10分ほどの距離に位置する千城台地区は1970年代に開発された宅地で、東京などの企業に勤めていた人たちが今はリタイアして暮らし続けています。年々「老老世帯」「独居世帯」の割合も高くなっているようです。

リハビリ現場
広い空間をうまく使った施設が目だつ

総泉病院はもともと高齢者を対象とした療養型病院で、以前は年単位で入院している患者が多数でした。しかし、現在、同院の入~退院の典型的なパターンは、発症後1カ月くらいで急性期を脱した患者が入院してきて、在宅復帰に必要なリハビリテーションなどを経て、発症後3カ月ほどで退院していくという亜急性期の患者、がんのターミナル患者、長期化した神経難病などが主流です。さらに、入院に至った原因疾患以外にも複数の疾患を抱えており、それらに対するケアも同時に進める必要があるのです。

先日も、こんな例があったそうです。特別養護老人ホームで脳出血となり、急性期病院に入院した患者が1カ月ほどで急性期を脱し、同院に入院してきました。ところが、すぐにリハビリテーション、というわけにはいきません。なぜなら、経鼻栄養が必要なうえ、肺炎も患っていたからです。それらの経過を見て、様子を見ながら、本人の可能な範囲でのリハビリテーションを進めていくという手順を踏んでいきました。喀痰吸引の必要な患者も多く、経管栄養を必要とする患者は120~130人に達すると言います。

(取材・編集:リハビリネット編集部)

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先生の紹介

大坊 昌史 氏

大坊 昌史 氏

<医療法人社団誠馨会総泉病院 院長>

経歴
昭和54年3月 順天堂大学医学部卒
平成3年12月 加曽利病院(現千葉中央メディカルセンター)外科部長就任
平成8年4月 同副院長就任
平成20年4月 総泉病院院長就任

急性期医療の最前線から、療養型病床である総泉病院に院長に就任。 自身のキャリアを生かしながら、あらゆる患者さんへの、ふさわしい医療を提供すべく邁進している。

病院の紹介

医療法人社団誠馨会 総泉病院

〒265-0073
千葉県千葉市若葉区更科町2592
tel:043-237-5001
http://sousen.seikei-kai.or.jp/

<特徴>
総泉病院は1987年創設以来、一貫して高齢者の療養型病院として地域医療に貢献してきました。高齢者の特性を理解して、専門性の高いチーム医療をめざす一方で、患者、家族のみならず、職員も和めるゆとりある癒しの環境を整備しています。