リハビリの現場で活躍するドクターの生の声をお届けします!日本全国!リハビリ・医療機関訪問

第2回

リハビリは、身体の機能が低下した時、
他の何かで補いながら、今までの環境に適応していくこと

むさしのタワーズ整形外科
院長:西田 光 氏
一般的なリハビリの内容を教えてください。

クリニックの場合は物理療法が主で、頚椎や腰椎の牽引療法、低周波・マイクロ波などの電気治療、ウォーターベッドでのマッサージ治療といったものが多いと思います。理学療法士や作業療法士がいる病院ではより具体的な指導、運動のサポートも行っています。リハビリは筋力の衰えを改善し、関節を柔らかく保つために出来る限り早期から始めます。例えば、手首の骨折の場合、ギプス等で固定されていない指先や肩関節から始めるように指導します。骨が多少できてきた段階で手首や肘の運動に移っていきます。

電気治療

骨折であっても膝の靱帯損傷であっても、リハビリを始める時期、どこから、どの程度の運動負荷をかけていくか、という判断が重要です。

早い時期に始めないと機能の回復に支障が出てしまうのですか?

その通りです。関節の場合は動きが硬くなって本来動くはずの範囲が狭まってしまいます。それによって日常生活にも支障を来たすような状況になってしまうのです。なるべく早くリハビリは始めないといけませんが、やり方によって症状が悪化することもあるので、医師の判断に従って、手順を守ってやっていかなければいけません。筋力の維持については、人任せに手足を動かしても筋肉のトレーニングにはならないので、やはり自分でやることがとても大切です。そのためには筋力強化の意味も含めて患者さんにもよく理解していただくことが重要です。どんな疾患でも、急性期、回復期、慢性期でそれぞれ行う内容は変わって行きますが、今は脳卒中の重症例でも、なるべく早期からリハビリを行うのが望ましいと言われています。

肩こり・腰痛のリハビリ指導は?

当院では、肩こり・腰痛の方には安全なストレッチ方法を指導しています。また「やってはいけないこと」の指導も大事です。例えば生活習慣で椅子の座り方ひとつでも、浅く腰かけて背もたれを中途半端な位置から使ってしまうと、非常に腰に負担がかかります。首の場合でも、肩が凝ると首をぐるぐる回してしまう方が多いですが、これは頚椎の変形が強まって症状を悪化させてしまいます。一番悪いのは首をコキッと鳴らしてしまうことで、これは骨・関節にストレスをかけて変形が強まり、症状が悪化してしまいますので、肩こりを解消するために適切なストレッチも指導しています。首にしても腰にしても、患者さんご自身で行ってもらうストレッチやマッサージでは、症状を悪化させずに筋肉をリラックスさせる安全な方法を知っておくことが必要です。

例えば首のストレッチの場合、手を後ろで組んで引っ張って、首をゆっくり横に倒す、そうすると首の横の繊維を伸ばすことができます。これを戻して、今度は前の方に首を倒すと、伸びる繊維が後ろの方に変わります。こうすれば、首をぐるぐる回さずに安全なストレッチを行うことができます。

肩こり・腰痛のリハビリ

関節の変形による病気というのは結構多いのでしょうか?
膝が圧倒的に多いです。変形性の膝関節症は日本人の場合は内側から起こってくることが多いです。欧米人は外側の方が多いのですが、日本人は畳の生活習慣が関係しているといわれています。これはどうしても慢性的に進行していってしまうもので、完全に進行を止めることはできません。治療内容としては、軟骨が痛んでくるので、軟骨を保護しながら修復作用をもたらす潤滑液のような効果のあるヒアルロン酸等の薬剤を直接注入するという治療法が一番多くとられています。また、電気治療等で局所の血流を改善する方法もあり、痛みもそれである程度よくなるケースがあります。

他にも、装具療法といって、関節の内側が痛んでいるような場合に、外側に体重が分散するような膝の装具を着けてもらうことがあります。さらに、大腿前面にある大腿四頭筋の強化も重要です。

装具療法
<装具例>


前のページへ

1

2

3

次のページへ

ドクターが解説する!「リハビリ・医療機関訪問」のトップへ

執筆者の紹介

西田 光 氏

むさしのタワーズ整形外科 院長

大学病院での副医局長・病棟班長及び一般病院の整形外科医長、リハビリ専門病棟の担当医を経て、2010年むさしのタワーズ整形外科開設。
経歴
1993年 東京女子医大第2病院整形外科助手~副医局長、病棟班長
1998年 大樹会 佐藤病院(鎌倉)整形外科 医長
2003年 井上外科胃腸科(現 世田谷井上病院)整形外科 医長
2005年 慈生会 野村病院(三鷹)リハビリテーション科 医長 (回復期リハビリテーション病棟)
2011年 むさしのタワーズ整形外科開設