第1回
脳は場所ごとに役割が違うので、発症した場所次第で症状が決まります。一般論を言うと、手足(四肢)の麻痺は半年経っても治らないものは後遺症と認定されます。高次機能(判断したり理解したりする上等な力)とか言葉の障害は回復に時間がかるので、半年の状態でダメだと決めつけることができず、年単位のスパンで診ます。半年まるまる改善しなかった人も2~3年経ってみると「こんなにしゃべれるようになったの!」という人もいます。麻痺の人は半年経って改善しなかったら、多くの場合残念ながら、急には変わりません。
高次機能や言葉障害は徐々に言葉が増えていき、徐々に理解が進みます。ただし元の通りにはなりません。
脳の中の神経細胞は分裂して増えることがありません。だから脳梗塞や脳出血で破壊されてしまうと、失われたままになるわけです。ではリハビリテーションは何をもって価値があるかというと、学習効果により神経細胞間のネットワークが増えることです。子供たちの学習も同じことですよね。リハビリテーションを行うことによって神経細胞の間のネットワークが強くなる・速くなる・増える―それによって効果がでます。それを目指してリハビリをします。つまりリハビリテーションというのは残された能力を維持し、活用して生活していくための工夫なのです。
麻痺の状態で何もリハビリをしないでいると徐々に筋肉の拘縮(関節の動きが制限された状態)が進み、関節が変形します。関節が変形すると靴も履けないし立つ時もつま先しか付けません。麻痺になってしまった人に対するリハビリというのは麻痺を治すわけではなく、麻痺のために起こる筋肉の拘縮で関節が変形してしまい、普通にできることもできなくなってしまう状態にならないように、拘縮を予防するわけです。この拘縮の予防・関節の変形の予防が維持期の慢性期のリハビリテーションに対する一番の目標です。
また、今のは維持期の話でしたが、もっと前の段階に急性期と回復期があります。 急性期は、脳の死にかかっている部分を病院で死なないようにするための治療を行います。回復期では、残された脳に活を入れて能力を体得するためのリハビリテーションを行います。100だった能力の人がある日突然40の力になり、そこから脳がむくれるので一層悪くなります。その後、回復期の時期が一番能力を体得しやすいので集中的にリハビリを行うのが効果的です。
久保田 毅 氏
内科 久保田医院 院長
1984年 | 三重大学医学部卒業 |
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1984年 | 横浜市立大学医学部病院研修医 |
1986年 | 横浜市立大学医学部病院脳神経外科医務吏員 |
1995~ 1998年 |
横浜市立大学医学部脳神経外科助手 |
2003年 | 横浜市立大学医学部脳神経外科助手 |
2005年 | 内科 久保田医院 開業 |