知っておきたい!対処方法~大腿骨近位部骨折編~

救急搬送から治療

大腿骨近位部骨折は、一刻を争う病気ではありません。
しかし、治療が遅れると生命に関わるため、早急な治療が必要です。

大腿骨近位部骨折編

(2)救急車が来るまでにしておくべきこと

大腿骨の頚部骨折

救急車が到着するまでに、介護している人などがやっておくべきことがあります。

まず、本人が持っている「お薬手帳」などの個人の服薬内容が分かるものを用意しましょう。
また、ペースメーカーをしているとか、大きな手術をしたことがあるといったような、これまでかかったことのある病気や手術などの診療の記録(既往歴)も調べて、救急隊員に伝えましょう。あらかじめ、そうした情報が分かっていると、搬入先の病院で、よけいな診察や検査をする必要がなくなるため、治療にとりかかる時間が短くなり、結果として術後の回復(予後)に貢献することになるからです。

また、救急車が到着するまでには、どれだけ救急隊が急いでも数分から十数分の時間がかかります。その間に、入院は必然ですから、身の回りの品を準備しておいて、搬送される際に持参しておくと、すぐに手術・入院となっても、わざわざ荷物を取りに帰宅する必要がなく助かります。
骨折が起こってから、救急車が来るまでに準備することは以上です。

なお、それ以外に注意しておかなくてはいけないのは、繰り返しになりますが、大腿骨近位部骨折は一度、起こってしまうと身動きができなくなる点です。もし一人暮らしの高齢の方であれば、骨折してから発見されるまで時間がかかってしまうかもしれません。そのような場合は命にも関わりますから、そうした事態を避けるためには、できるだけ日頃から家族をはじめ介護をされる方が積極的に高齢の方とコミュニケーションをとるように努めておきましょう。そして、異常があった場合には、できるだけ早く気づけるように、日頃から注意を払っておくことが大切です。

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執筆者の紹介

福井智一氏

福井智一氏

医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科

昭和51年大阪生まれ
兵庫医科大学卒業

兵庫医科大学大学院を卒業後、兵庫医科大学整形外科学教室や北海道我汝会えにわ病院などを経て2012年4月から現職。
専門は股関節を中心とした関節外科