知っておきたい!対処方法~大腿骨近位部骨折編~

救急搬送から治療

大腿骨近位部骨折は、一刻を争う病気ではありません。
しかし、治療が遅れると生命に関わるため、早急な治療が必要です。

大腿骨近位部骨折編

(1)骨折した場合の緊急手当は

すぐに救急車を呼んでください。骨折した下肢は骨を包む厚い筋肉の収縮によって短縮し、動かそうとすると痛みによる筋収縮が起こるため、よけい痛みが増強します。

大腿骨の頚部骨折

ですから移動させずに、まずは本人が楽な姿勢を保つことが大切です。
例えば、座っている方が楽だというのなら座ったままでいいので、無理に横にしようなどとはしないでください。折れた場所や折れ方などによって、症状はまちまちですから、とにかくまず、どの姿勢でいれば一番、痛みを感じないかを確認しましょう。
そして、その状態で救急車が到着して、搬送準備が整うまで待つことがいいでしょう。

なお、既に述べましたが、そうして待っている間には、骨折した部分からは少しずつですが出血が起こっています。結果として、総出血量は500~1000mlほどになるので高齢者は必ず貧血を起こします。ですから、この状態で長く放置しておくと、循環動態に支障をきたし、肝臓や腎臓など主要な臓器の障害や血圧が下がってショックを引き起こすなど、命に関わることを忘れずにいてください。

なお、もともと高血圧や糖尿病といった、いわゆる基礎疾患があるような方は、合併症の恐れもあるので、すみやかに病院へ搬送する必要があります。
いずれにしましても、救急車を呼ぶことをためらうべきでない病気であることは間違いないので、すぐに救急に電話してください。

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大腿骨近位部骨折編 ― 救急搬送から治療 ―

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執筆者の紹介

福井智一氏

福井智一氏

医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科

昭和51年大阪生まれ
兵庫医科大学卒業

兵庫医科大学大学院を卒業後、兵庫医科大学整形外科学教室や北海道我汝会えにわ病院などを経て2012年4月から現職。
専門は股関節を中心とした関節外科