知っておきたい!対処方法~大腿骨近位部骨折編~

役割と予防

大腿骨近位部骨折は、一刻を争う病気ではありません。
しかし、治療が遅れると生命に関わるため、早急な治療が必要です。

大腿骨近位部骨折編

(2)大腿骨の骨折の問題点と注意点とは

大腿骨骨折が特に問題になるのは、どうしても力が入る部分だけに、動かすと痛みも大きいことから、身体を動かすのがおっくうになることです。もし、高齢者が身体を動かさなくなれば、身体の筋肉が衰えてしまい、寝たきりとなり、床ずれや肺炎などの合併症などを引き起こす原因となるからです。つまり、骨折をきたすことで日常生活動作の低下がかなりの確率で起こります。もとの生活に完全に戻るには半年から1年のリハビリが必要になります。

また「(1)大腿部とその骨折について」で紹介した股関節包内で起こった骨折の場合、骨頭への血液の流れが悪くなるため、手術で骨を接合しても骨がつかない状態「偽関節」や骨頭が死んでしまう状態「大腿骨頭壊死」を引き起こす可能性があるため長期間の治療が必要になります。

実際には、ヒトは下半身より上半身の方が重いことから、その上半身を支えるために脚の骨は、非常に強靭な構造になっています。そのため普通の状態であれば、なかなか骨折したりはしません。もし若い人が骨折するとすれば、高い所からの転落、交通事故、ラグビーなど激しい運動などで外部から激しい衝撃があった場合です。

しかし高齢者、特に閉経した女性の高齢者では骨粗鬆症(こつそしょうしょう)にかかっている場合が多く、布団の上で転倒しただけでも骨折してしまいます。実際、我が国では2007年で約15万件もの発生があり、さらに高齢化が急速に進んでいることもあって、今後15年で1.5倍~2倍に増え、何と2042年には32万件もの数が予想されています。

症状
転倒や転落後に大腿の付け根の部分に痛みが出現し、立つことや歩くことができなくなり、下肢を動かすと痛がります。ただし、ずれの小さい亀裂骨折(いわゆるヒビ)の時はつかまり立ちや伝い歩き程度なら可能なことがあり注意を要します。またこの骨折は骨粗鬆症を伴う高齢者に多く発生しますので、認知症などがある場合は発見が遅れることがあります。

骨折の痛み

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執筆者の紹介

福井智一氏

福井智一氏

医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科

昭和51年大阪生まれ
兵庫医科大学卒業

兵庫医科大学大学院を卒業後、兵庫医科大学整形外科学教室や北海道我汝会えにわ病院などを経て2012年4月から現職。
専門は股関節を中心とした関節外科