万が一、脳梗塞になって、治療した後に後遺症が残った場合、前の章でも紹介しましたが、日常生活における自立と早期の社会復帰を支援するためには、術後、できるだけ早くからのリハビリテーションへの取り組みが重要です。
少しでも後遺症を軽減し、自立した日常生活を送れるようにするためにも、身体を動かすリハビリテーションをなるべく早い段階で始めなくてはなりません。
ただし、リハビリテーションのやり方は、急性期・回復期・生活期(維持期)によって異なります。
急性期のリハビリテーションは、機能回復を妨げないことが目的となります。具体的には、できるだけ寝たきりにならないように、病状が安定したなら、早ければ当日から行われます。
回復期のリハビリテーションは、身体機能の回復が進んだ際に行われるもので、食事や歩行、排泄といった日常生活で必要な身体機能の回復を目的にしたものです。なお、回復期のリハビリテーションはリハビリステーションなどの専門施設で、集中的に行われるのが一般的です。
生活期(維持期)のリハビリテーションは、主に自宅などで、日常生活と並行しながら行うもので、社会復帰を目指して行います。なお、生活期(維持期)のリハビリテーションは、多くの場合、生涯に渡って行う必要があります。
これらの中でも、特に重要なのが急性期のリハビリテーションです。もし、後遺症で寝たきりの状態であれば、筋肉が萎縮して痩せ細りますし、さらに、麻痺した手足を全く動かさないと、関節が固まってしまうからです。その他にも、床ずれの問題や骨がもろく折れやすくなる、いわゆる「骨粗鬆症」が起こる可能性もあるため、まず、少しでも身体を動かせるようにすることが大切だからです。
なお、脳梗塞のリハビリテーションは、本人はもちろん周囲の家族なども長期間にわたってサポートしてあげることが必要です。その際、本人の沈みがちになる気持ちを維持してあげる、継続的なメンタルケアも大切になることを忘れないでください。
正門 由久 氏
<リハビリテーション科専門医>
東海大学医学部 専門診療学系 リハビリテーション科学 教授