知っておきたい!対処方法~前十字靱帯損傷編~

役割と予防

「前十字靱帯(膝)」を損傷した場合、治療せずに運動を続けていると、膝の他の組織を傷つけることになるので、早期に治療を受けてください。

前十字靱帯損傷編

(4)損傷の診断方法

前十字靭帯が損傷した場合ですが、正確な診断のためにはスポーツドクターなどに診てもらうことをお勧めします。診断は、まず問診から始まります。その人が、スポーツをしていたのかどうか。していたなら、どのような状態で膝に痛みが起こったのかなどを知ることが大切だからです。
診察室で行う検査方法としては「Lachman test(ラックマンテスト)」があります。これは、前十字靭帯が切れると脛骨が大腿骨に対し前方へずれてくるため、その移動量を徒手的に検査方法です。
また、「Pivot shift test」というものもあります。これは、膝に外反、内旋のストレスをかけ、伸展から屈曲させていき、前方へ移動している脛骨が元の位置に戻る際の衝撃感を診る検査です。
こうして検査を経て、最終的には画像診断を行います。ただし前十字靭帯の損傷の有無をチェックは、レントゲンではなかなかできません。なぜなら、レントゲンは骨しか映らないからで、そのため、MRIで撮影する必要があります。

ACL損傷のMRI
<前十字靭帯損傷のMRI>

前十字靭帯の損傷は“脛骨が大腿骨に対して前方へずれる”というのが特徴です。そのためMRIの画像で、まだら状高信号が見られたり、前十字靭帯の途絶と不連続があったりした場合には、ほぼ間違いなく損傷したと判断できます(写真参照)。

後は、前十字靭帯の損傷と同時に半月板や膝関節軟骨を損傷していないかどうか。いわゆる合併症がないかも診断します。
こうした検査を経て、手術をせずに、そのままにしておく「保存療法」がいいのか、手術を行う「手術療法」がいいのかを判断します。
その後の日常生活の質によっても違いますが、基本的にはスポーツを待たされるのであれば、手術療法が行われますが、どちらにするのかは、あくまでも患者さまの希望が最優先されます。

前十字靱帯損傷編 ― 役割と予防 ―

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執筆者の紹介

中山 寛 氏

中山 寛 氏

兵庫医科大学  整形外科 助教

昭和52年生まれ

医学博士、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本体育協会認定スポーツ医専門はスポーツ整形外科、下肢関節鏡手術(股関節、膝関節、足関節)
前十字靭帯再建術は解剖学的2重束再建を行なっている。