知っておきたい!対処方法~前十字靱帯損傷編~

役割と予防

「前十字靱帯(膝)」を損傷した場合、治療せずに運動を続けていると、膝の他の組織を傷つけることになるので、早期に治療を受けてください。

前十字靱帯損傷編

(3)損傷が疑われた時の対処方法

前十字靱帯の損傷は、実際には、もし現場に専門家がいなければ、すぐに起こったかどうか非常に判断しにくいものです。
しかし、その場で怪我をした選手などがいるわけですから、病院に連れて行くまで、適切な対処をする必要があります。
もし膝に激痛などを感じた人が出た場合、まず、第一には絶対安静にしてください。
これは何も前十字靭帯の損傷だけには限りませんが、もし、膝に経験したことの無い嫌な感覚を感じたと訴えた際には、すぐに横にさせて、膝に体重をかけたり捻ったりしないような体制をとるようにする必要があります。

RICE
<RICE療法>

こうした際に行うものにRICE(Rest Ice Compression Elevation)療法があります。具体的には、氷があれば、それを膝に当てて10分~15分くらい冷やすようにしましょう。ただし冷やしすぎには注意してください。また、膝の腫れを抑えるために弾力包帯で患部を圧迫固定するのも一つの選択です。ただし、強くまきつけると返って膝に悪いので圧迫しすぎには注意してください。そして最後に、腫れを少しでも抑えるために膝を心臓より高い位置に保つようにしてください。

そうしていても、やがて膝関節内に少しずつ血腫が貯まり、腫れてきます。
その痛みのために、歩くことができませんので、移動の際には松葉杖の使用をお勧めします。
その他、救急車の搬送先ですが、できれば膝の専門医のいる病院に連れて行くのがいいでしょう。もし、スポーツの途中で起こったのならば、できればスポーツ整形外科医がいる病院を選ぶようにしましょう。
いずれにしましても、必ず膝の専門医のいる病院に連れて行くようにしてください。

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執筆者の紹介

中山 寛 氏

中山 寛 氏

兵庫医科大学  整形外科 助教

昭和52年生まれ

医学博士、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本体育協会認定スポーツ医専門はスポーツ整形外科、下肢関節鏡手術(股関節、膝関節、足関節)
前十字靭帯再建術は解剖学的2重束再建を行なっている。