知っておきたい!対処方法~大腿骨近位部骨折編~

大腿骨近位部骨折のリハビリテーション

大腿骨近位部骨折は、一刻を争う病気ではありません。
しかし、治療が遅れると生命に関わるため、早急な治療が必要です。

大腿骨近位部骨折編

(4)入院中のリハビリテーション(その③)

具体的なリハビリ内容について説明します。
リハビリの内容には個人差があります。平行棒での立ち上がりや歩行訓練は、痛みの程度、医学的な荷重制限の程度(どこまで体重をかけてよいのか)を考慮して、少しずつ進められます。もちろん手術後の定期的な診察により予定が早くなったり遅くなったりすることはあります。

また、関節周囲の靭帯や筋肉が固く(拘縮)なっていますので、まず関節の動きを良くする運動からリハビリテーションは始まります。ときには理学療法士による徒手的なマッサージや、ホットパック、超音波などを使用した物理療法も併用されます。

こうして関節の柔軟性が戻ってきたら、次は筋力訓練にもとりかかります(これらは平行して行われます)。主に、立つのに必要な大きな筋肉群(大腿四頭筋、腸腰筋、臀筋群)を中心に訓練します。具体的には、まず仰向けに寝て、膝をぐっと伸ばし続けたり、膝を伸ばした状態で足全体を上げたり、お尻の持ち上げをしたり、座った状態で膝を伸ばしたりして、筋力を取り戻す訓練を行います。
なお、リハビリテーション科がある病院なら、専用の部屋もあって、リハビリテーションはそこで行いますが、できればベッドに戻られてからも、ベッドサイドで自分でも行うように心掛けると、なお効果があります。

平行棒での歩行訓練

これらの訓練を繰り返して行い、平行棒の歩行が安定するようになれば、歩行器を使って歩く訓練をします。そして最終的には押し車、杖歩行ができるまで歩行訓練を行います。
こうして歩けるメドがたつと、日常生活の復帰を目指して、作業療法が加わります。その時点での移動能力にあわせ、例えば、トイレに座る行為とか、靴下、靴のはき方、台所での立ち回りかた、自助具の近い方、など各個人の生活空間、スタイルに合わせた道具を使った訓練も行います。

なお、これらの訓練は理学療法士や作業療法士が担当しますので、本人はもちろん、介護される方などで、何か疑問点などがあれば、遠慮なくお問い合わせください。

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大腿骨近位部骨折編 ― 大腿骨近位部骨折のリハビリテーション ―

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執筆者の紹介

福井智一氏

福井智一氏

医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科

昭和51年大阪生まれ
兵庫医科大学卒業

兵庫医科大学大学院を卒業後、兵庫医科大学整形外科学教室や北海道我汝会えにわ病院などを経て2012年4月から現職。
専門は股関節を中心とした関節外科