知っておきたい!対処方法~前十字靱帯損傷編~

前十字靱帯損傷のリハビリテーション

「前十字靱帯(膝)」を損傷した場合、治療せずに運動を続けていると、膝の他の組織を傷つけることになるので、早期に治療を受けてください。

前十字靱帯損傷編

(8)手術した後に注意すること

大腿骨骨孔作製手順

前十字靱帯の再建手術ですが、平均的には健康的なスポーツ選手などが損傷する場合が多いことあって合併症が起こるリスクは、他の病気などに比べると低いのは確かです。 しかし、だからと言っても、やはり手術が行われているわけですから、過信は禁物です。

では、前十字靱帯の再建手術における合併症ですが、主に次のような症状が起こる可能性があります。
最も多いものが出血です。あくまでも外科手術ですからある程度の出血があるのは当然ですが、既述のように、前十字靱帯を再建するために骨に穴を空けて靱帯を通します。そのため、術後に骨からも出血します。そのため術後は、関節内や皮下に出血が溜まらないように、手術した方の足を上げ、さらにアイシングして対応します。
次に起こる可能性が高いのは感染です。これは何も前十字靱帯の再建手術に限らず、どのような手術であっても傷から感染を起こす可能性があるからです。それを予防するために。手術前後に抗生剤の点滴を行いますし、手術後は、切った場所を清潔に保つようにしています。
また、手術中になかなか確認しづらい極端に細い神経を傷つける可能性もあります(神経損傷)。こうした神経を傷つけた場合、皮膚の感覚が鈍くなったり、しびれたりすることがあります。しかし、一般的には時間の経過とともに回復しますので、それほど心配する必要はありません。
さらに、手術後の局所安静時にエコノミー症候群様の症状を引き起こす可能性も考えられます。いわゆる血栓症ですが、それを予防するために、例えば、手術中から弾性ストッキングを使い、さらに手術後は足首を動かすようにして血液内に血栓が起こらないようにします。
その他にも予期せぬ合併症が起こる可能性もありますが、いずれの場合にしましても、臨床経験が豊富な医師であれば迅速に対応してくれますので、過度に心配する必要はありません。
なお、既述しました関節鏡視下手術であれば、傷も小さいですし、器具も常に清潔に保たれながら手術が行われますので、合併症のリスクは、さらに低くなります。

前十字靱帯損傷編 ― 前十字靱帯損傷のリハビリテーション ―

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執筆者の紹介

中山 寛 氏

中山 寛 氏

兵庫医科大学  整形外科 助教

昭和52年生まれ

医学博士、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本体育協会認定スポーツ医専門はスポーツ整形外科、下肢関節鏡手術(股関節、膝関節、足関節)
前十字靭帯再建術は解剖学的2重束再建を行なっている。