現在、術後に見られるリンパ浮腫に関する専門家に対して「リンパトレナージ」の資格が設けられています。
リンパトレナージは、認定する団体や協会によって「リンパドレナージセラピスト」や「リンパ浮腫指導技能者」、「リンパ浮腫療法士」などと、その名称は異なっていますが、基本的にはリンパ浮腫の患者へのリンパドレナージマッサージや弾性着衣や弾性包帯を用いた圧迫療法、日常生活の指導などを行う専門家を意味しています。
実際、がんの手術をした場合、何らかの形でリンパ腺への影響が出ることが多く、乳がんも例外ではありません。治療した側の腕にむくみなどの症状が出ることがあり、その解消のためには、リンパトレナージの資格者によるマッサージなどのリハビリテーションが必要となります。
そもそもリンパの末端は、皮膚のすぐ下、毛細血管の手前にあり、リンパ毛細管の表面は「アンカーフィラメント」と呼ばれる細かい線維によって皮膚と繋がっています。このフィラメントを引っ張るようなマッサージをすることでリンパ末端の細胞を引っぱります。その結果、細胞に隙間が生み出されるため、組織間液の吸収が良くなり、腕のむくみが解消されることになります。
ただしリンパは、通常、繊細な状況にあるため、素人が闇雲に強い圧力を加えたりすると、逆にアンカーフェラメントを潰してしまうことになり、その結果、間質液の通り道を無くしてしまって、逆にむくみがひどくなる可能性があるので注意が必要です。
仁尾 義則 氏
<乳腺外科医>
医療法人喜水会 乳腺外科 仁尾クリニック 院長