知っておきたい!対処方法
~乳がんのリハビリテーション~

具体的なリハビリテーションのやり方

リハビリテーションは日常生活を取り戻すのに必要不可欠

乳がんのリハビリテーション編

(3)リハビリテーションのやり方(その3)

現在、術後に見られるリンパ浮腫に関する専門家に対して「リンパトレナージ」の資格が設けられています。

リンパトレナージは、認定する団体や協会によって「リンパドレナージセラピスト」や「リンパ浮腫指導技能者」、「リンパ浮腫療法士」などと、その名称は異なっていますが、基本的にはリンパ浮腫の患者へのリンパドレナージマッサージや弾性着衣や弾性包帯を用いた圧迫療法、日常生活の指導などを行う専門家を意味しています。

実際、がんの手術をした場合、何らかの形でリンパ腺への影響が出ることが多く、乳がんも例外ではありません。治療した側の腕にむくみなどの症状が出ることがあり、その解消のためには、リンパトレナージの資格者によるマッサージなどのリハビリテーションが必要となります。

そもそもリンパの末端は、皮膚のすぐ下、毛細血管の手前にあり、リンパ毛細管の表面は「アンカーフィラメント」と呼ばれる細かい線維によって皮膚と繋がっています。このフィラメントを引っ張るようなマッサージをすることでリンパ末端の細胞を引っぱります。その結果、細胞に隙間が生み出されるため、組織間液の吸収が良くなり、腕のむくみが解消されることになります。

ただしリンパは、通常、繊細な状況にあるため、素人が闇雲に強い圧力を加えたりすると、逆にアンカーフェラメントを潰してしまうことになり、その結果、間質液の通り道を無くしてしまって、逆にむくみがひどくなる可能性があるので注意が必要です。

リンパトレナージによりマッサージの図
こうしたことから、乳がんの手術後、むくみが見られるようになった場合には、リンパの通りをよくするように、専門家であるリンパトレナージによりマッサージを受けましょう。

それでも、仕事で忙しいなどの理由で、なかなかマッサージに行くことができない場合は、意識して腕を上げて、リンパを腕の付け根の方に流すようにすれば、少しでもむくみが軽減します。



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乳がんのリハビリテーション編
― 具体的なリハビリテーションのやり方―

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監修

仁尾 義則 氏

仁尾 義則 氏

<乳腺外科医>
医療法人喜水会 乳腺外科 仁尾クリニック 院長

昭和27年生まれ

1976年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部第二外科入局。その後、赤穂市民病院外科、京都大学大学院を経て、UCLA留学。帰国後、京都大学第一外科助手、島根大学医学部第一外科助教授、児玉外科、十条リハビリテーション病院を経て、2008年4月より現職。2014年12月までに、約4400例の手術を行なう(乳腺疾患約2520例、甲状腺疾患約180例、消化器疾患約1350例、その他約370例)。