知っておきたい!対処方法
~乳がんのリハビリテーション~

具体的なリハビリテーションのやり方

リハビリテーションは日常生活を取り戻すのに必要不可欠

乳がんのリハビリテーション編

(4)心のリハビリテーションにも注意

乳がんは、乳房という女性にとって大切な臓器に発生するがんです。また、30~40代という若い層を中心に20代などにも見られるがんということもあって、他のがん以上に患者の精神的に与えるダメージが大きいがんといわれています。そのため、肉体的なリハビリテーションと同等に『心のリハビリテーション』も重要になります。

多くの医療機関などの調査で、乳がんを発症した患者の多くには、不安と抑うつ(「適応障害」や「うつ病」)が見られるとの報告がなされています。また、積極的なケアをしなかった場合には、不安や抑うつ状態は術後1~2年以内の患者では10~30%、再発後の患者では40~50%程度に見られるという報告もあります。

「適応障害」の場合、眠れないとか家事が手につかないといったように日常生活に支障をきたすような精神症状が見られます。そして、抑うつ気分や興味・喜びの喪失といった一般的な「うつ」の状態が起こるのが「うつ病」です。乳がんの場合は、例え、一部であっても乳房の損失といった女性の自己同一性(アイデンティティ)の喪失が起こりやすいため、うつ病の発生につながることも多いことから用心が必要です。

特にうつ病の場合は、一般的に他者からは分かりにくいこともあり、乳がんの手術を受けた人に少しでもおかしな兆候が見られたならば、遠慮することなく、専門家のカウンセリングを受けるように勧めるのはもちろん、薬物療法も厭わないことが肝心です。

心のリハビリテーションの図
また、患者がこうした状態になるのを避けるためにも、乳がんの手術を受けたことを知っている家族などは、日ごろから患者の言動に注意するようにしましょう。なお、その際には、例え、手術の影響で患者の日常生活の作業に支障が出たとしても、我慢強く見守ってあげることが大切です。本人も周囲の人も、そうした協力が『心のリハビリテーション』となることを、日ごろから忘れないようにしましょう。



乳がんのリハビリテーション編
― 具体的なリハビリテーションのやり方―

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監修

仁尾 義則 氏

仁尾 義則 氏

<乳腺外科医>
医療法人喜水会 乳腺外科 仁尾クリニック 院長

昭和27年生まれ

1976年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部第二外科入局。その後、赤穂市民病院外科、京都大学大学院を経て、UCLA留学。帰国後、京都大学第一外科助手、島根大学医学部第一外科助教授、児玉外科、十条リハビリテーション病院を経て、2008年4月より現職。2014年12月までに、約4400例の手術を行なう(乳腺疾患約2520例、甲状腺疾患約180例、消化器疾患約1350例、その他約370例)。