知っておきたい!対処方法~前十字靱帯損傷編~

前十字靱帯損傷の治療

「前十字靱帯(膝)」を損傷した場合、治療せずに運動を続けていると、膝の他の組織を傷つけることになるので、早期に治療を受けてください。

前十字靱帯損傷編

(2)手術療法とは(その①)

ACL再建術

既述のように、損傷した前十字靭帯は再び治る率は非常に少ないため、一般的には再建手術を行う場合が多く、手術を行えば、安定した膝となり、再度スポーツ復帰が可能となります。
ただし、前十字靭帯の手術は特殊ですので、どこの病院でもしている手術ではありません。担当医にお聞きになり、専門病院へ紹介してもらうようにしましょう。

手術方法は再建術といって損傷した前十字靱帯の代わりに、自分の体の他の腱をとってきて移植します。
ハムストリングを使う方法と膝蓋腱を使う2つの代表的な方法があります。どちらもメリット、デメリットがあります。
そして手術のタイミングですが、個人差はありますが、術後に関節線維症が原因で関節が動く範囲に障害(拘縮)を残さないためにも、できれば炎症などによって組織や器官はれ上がる(腫脹)やうずき(疼痛)が落ち着いて、十分な可動域が得られるようになる期間(2~3週間)を置いてから行うのがいいでしょう。それ以上遅くなると、半月損傷や軟骨損傷のリスクが1%/月でアップし、変形性膝関節症へ進行する可能性が大きくなると言われていますので、早めの手術を受けるのをお勧めします。
その後のスケジュールですが、一応の目安としては、約6ヶ月~1年後には、ほとんどの場合、スポーツに復帰できるようになります。
なお、アメリカなどでは、基本的に日帰り手術がほとんどですが、日本では、保険の問題をはじめ、自己責任や病院の体制などの問題などがあるため、2週~4週間の入院で手術を行います。
その他、手術方法ですが、最近では細い棒状のカメラ用いて行う「関節鏡視下手術」が行われています。傷をつける箇所が小さくてすむため、傷の治りが早く、リハビリテーションに早くとりかかれるなどのメリットがあります

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執筆者の紹介

中山 寛 氏

中山 寛 氏

兵庫医科大学  整形外科 助教

昭和52年生まれ

医学博士、日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本体育協会認定スポーツ医専門はスポーツ整形外科、下肢関節鏡手術(股関節、膝関節、足関節)
前十字靭帯再建術は解剖学的2重束再建を行なっている。