知っておきたい!対処方法~大腿骨近位部骨折編~

救急搬送から治療

大腿骨近位部骨折は、一刻を争う病気ではありません。
しかし、治療が遅れると生命に関わるため、早急な治療が必要です。

大腿骨近位部骨折編

(3)大腿骨近位部骨折の治療方法(その①)

骨折の治療

病院に搬送されると、できるだけ早く手術が行われます。
その理由は、骨折後の寝たきり状態による合併症の予防のためです。
早期離床、除痛、機能回復の3項目が手術の目的です。
他の病気と同様に、大腿骨近位部骨折の治療方法も、患者さまの年齢や骨折部位のずれ(転位)の大きさ、そして軟骨のすりへり(関節症)などによって異なってきます。

A. 大腿骨頚部骨折の治療法としては骨のくっつきにくさの点から、自分の骨をくっつける方法(骨接合術)と人工物に置き換える方法(人工骨頭挿入術、全人工股関節置換術)の2つがあります。

① 自分の骨をくっつける手術(骨接合術)は、主に55歳未満までの若い方が対象です。できるだけ自分の骨を残すことが望ましいことから、ずれ(転位)があっても、できる限りねじやピンを使用して自分の骨を接合する治療法です。
② 人工物に置き換える手術(人工骨頭挿入術、全人工股関節置換術)は、65才以上の高齢の方や、ずれが大きすぎて骨折部がくっつかない可能性が高い方に行なわれます。
55~65才の中年の方は、日常活動レベルや合併症などを勘案して、手術方法が選択されます。

B. 大腿骨転子部骨折の治療は、解剖的特徴から骨をくっつける骨接合術が選択されることが多いです。
手術の大きさの程度の違いや術後合併症の種類、頻度がそれぞれ異なりますので治療を受ける方は、主治医からの情報提供と自分の生活スタイルを合わせて、どの手術を行うかどうかを決める必要があります。

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執筆者の紹介

福井智一氏

福井智一氏

医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科

昭和51年大阪生まれ
兵庫医科大学卒業

兵庫医科大学大学院を卒業後、兵庫医科大学整形外科学教室や北海道我汝会えにわ病院などを経て2012年4月から現職。
専門は股関節を中心とした関節外科