知っておきたい!対処方法~大腿骨近位部骨折編~

役割と予防

大腿骨近位部骨折は、一刻を争う病気ではありません。
しかし、治療が遅れると生命に関わるため、早急な治療が必要です。

大腿骨近位部骨折編

(3)骨折が起こったときの判断は

大腿部頚部骨折

高齢者が転倒したからといって必ずしも大腿骨頚部骨折になるとは限りません。
転倒するのを支えようとして腕が折れたりする事故も少なくないのですが、それでも骨折の判断を誤ると、その後の機能回復や生命予後に大きな差が出てきますから、適切な判断が重要です。

まず大腿部頚部骨折かどうかを疑う症状は、転倒などした後、太股の付け根部分や膝の上あたりに痛みが生じて、立つことや歩くことができなくなることです。ほとんどの場合、下肢を動かそうとすると痛みを訴えます。もし、それがふとももの付け根のあたりもしくはふともも全体であれば、まず大腿骨近位部骨折を疑ってみていいでしょう。

ただし、ずれの小さな亀裂骨折、いわゆるひびが入っただけの場合もあります。ひびだけの場合は、何とか立つことも出来ますし、場合によっては伝い歩きもできます。しかし、例えひびであっても、痛みが伴いますしので、歩行を嫌がるようになり、結果として骨折と同じような機能障害を引きおこすことになるので、びびの場合でも治療を受けてください。

特に注意が必要なのは、痴呆症などがある場合です。本人は痛みを感じてはいますが、もともと車いす生活であったりしてうまく症状として見えてきません。そのため大腿骨近位部骨折かどうかの判断が難しくなります。しかし、だからといってそのままにしておくと、貧血、循環不全などを引き起こすなど生命にもかかわってきますから、介護されている方が、移乗時などに痛みで声をあげる、足を動かしたがらないなどの症状から判断して病院へ連れて行くようにしてください。

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執筆者の紹介

福井智一氏

福井智一氏

医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科

昭和51年大阪生まれ
兵庫医科大学卒業

兵庫医科大学大学院を卒業後、兵庫医科大学整形外科学教室や北海道我汝会えにわ病院などを経て2012年4月から現職。
専門は股関節を中心とした関節外科